§31-11 雷電の反トルク対策 産田健一郎さんから
§31-9を拝見しました。その中で説明不足の分
がありましたので補足します。
零戦の場合は、堀越二郎さんの編み出したの「操縦系統の剛性低下による操縦応答性の改善」の理論応用により、比類なき空戦性能が生
まれました。
その経験はそのまま雷電にも応用された訳ですが、急降下時にフット
バーによる当て舵が異常に重いことが分かりました。これは多分大馬力エンジンのためのプ
ロペラの後流によるものと思われますが、その対策としてエンジンを取付け面で3度
右へ振る案が出まして、私はその改修図面を書かされました。
その直後に私は烈風の開発の方へ移りましたが、雷電のその試験機が出来た話は有りませんでした。
多分こ
の案は中止となり、堀越式剛性低下方式の範囲内で、レバー比の変更とか方向舵面積を加減する事で解決したものと思われます。
このノウハウは更に大型で大馬力の烈風に
も応用され、空戦フラップの併用と相まって零戦以上の良好な操縦性が確認されまし た。
勿論エンジン、方向舵にオフセットは有りません。以上です。
佐伯から : 「操縦系統の剛性低下による操縦応答性の改善」とは、零戦試作機の高速時における昇降舵の重すぎ・効きすぎの解決策として、操縦ケーブルなどの剛性を下げて伸縮性を持たせたものです。
剛性が低ければ、高速で舵面に当る風力が強くても、ケーブルの伸びによって昇降舵の操作が楽になり、低速の時は舵面に当る風力が弱いので伸びません。高速で伸び、低速で伸びない程度の剛性です。
これは、伸縮すると舵の効きが悪くなるという当時の常識を頭から覆した理論でした。
海軍の試験官をして「零戦の昇降舵については満足すべき状態になった。あらゆる緩急の操縦に悪いところはない」と言わしめた画期的な成功であり、戦後ホーカー航空機会社主任設計士は1958年のイギリス航空学会誌で「当時の水準から見て驚嘆に値する構想・手法だ」と書いております。
(参考文献 堀越二郎著 「零戦」 1970年発行KAPPA
BOOKS)